2023年2月2日木曜日

グローバルセミナー「ネパールの出稼ぎ事情と村の参加型地域づくりの試み」ご報告

2023年1月28日に、横浜YMCA国際事業委員会主催によるグローバルセミナー「ネパールの出稼ぎ事情と村の参加型地域づくりの試み」を開催しました。

新型コロナウィルス感染症拡大の影響で海外からの日本への入国人数は減少傾向にありましたが、最近は回復傾向にあります。中でも、ネパールから出稼ぎや留学の目的で来日する人びとが増えており、横浜市に住む在留外国人の中でも、中国、韓国、ベトナム、フィリピンに続く多さとなっています。

多くのネパールの人びとが日本で活躍していることに目を向け、ネパールの人びとが来日する経緯及び背景、ネパール現地の住民参加型の地域づくりについてをお話いただきました。

セミナー前半では、ネパール出身のジギャン・クマル・タパさん(公益財団法人かながわ国際交流財団職員、駐日ネパール大使公式通訳)に、「ネパールの出稼ぎ事情:光と影」をテーマにお話をしていただきました。
ネパールの概要を紹介した後、海外への出稼ぎを後押しする背景として国の現状と課題に触れました。ネパール国内では就労機会が少なく、国の政策として海外への出稼ぎを推奨しているため、多くの若者が海外を目指すそうです。2000年代以降、来日するネパール人の人数が大幅に増え、とりわけ20代・30代が多く、留学や就労で配偶者と子どもを連れ家族で日本に暮らしている場合が多く見受けられます。海外への出稼ぎを後押しする風潮により、出稼ぎをしているネパールの人が抱える経済やメンタルヘルスの課題、ネパール国内の人材流出、地域停滞などの課題が浮き彫りになっています。


続いて、丸谷士都子さん(特定NPO法人地球の木顧問、横浜YMCA常議員・国際事業委員)より、ネパールの人びとが出稼ぎに頼らず生まれ育った村で生活していくための村づくりを住民参加型で実施してきた地域づくりの取り組みについてお話しいただきました。
丸谷さんは長年にわたり、ネパール現地の支援プロジェクトに携わっています。ネパール現地の専門家と連携し、カブレ郡マンガルタール村にて「幸せ分かち合いムーブメント」プログラムを実施しました。村の人びとが主導権をもち、その地域の潜在能力、土地固有の知恵を尊重する考え方を大切にしてプログラムを展開してきました。主に奨学金、図書室プログラム、教師トレーニング、収入創出プログラム、そして緊急支援(地震、大雨、洪水)を行いました。村の人びとより「現在必要なことは人生をより楽しく幸せにする知識を学ぶことです」「教師トレーニングで学んだことが役立っています。生徒たちの行動・規律に改善が見られました」との声がありました。
(プロジェクトの詳細はこちら:地球の木「マンガルタール村だより No.7 最終号」http://e-tree.jp/news/wp-content/uploads/2022/11/nepal_muradayori_vol7.pdf



質疑応答の時間には、参加者の皆さまから、ネパール現地の労働事情、教育事情の詳細を知りたい、海外出稼ぎによるネパール人の家族観の変化、地元の高齢者の介護課題について等、関心が寄せられました。

以下、感想の一部をご紹介いたします。

・ネパールから来日して、介護現場で働く外国人も増えており、ネパール国内の事情について興味深くお話を聞きました。国内で仕事がないため海外で働くことが当たり前になっている状況や、海外送金で生活は豊かになっているが、物価高や都市集中・過疎、残された家族(高齢者)問題などがあるというお話が印象に残りました。
ネパールでの住民参加型支援についても、そのような分野の話は詳しくないので、非常に勉強になりました。現地の人の文化、習慣、価値観を尊重しながら、自らで状況を切り開いていけるよう支援することが重要だと理解しました。

・是非、参加型の手法は、その過程の中で能力形成を行い、最終的には自らが主体となって運営していくという目標を国内で普及していきたいと思います。

・ネパールの方はなぜ国外に出稼ぎにいくのか、その社会的背景をわかりやすくお話いただきました。大変厳しい構造的な問題、悪循環になっている事情などを知ることができました。また、そのことを踏まえ、持続可能な地域社会づくりに向けて参加型の取組みの重要性について学ぶことができました。


今回のセミナーを通じて、私たちの暮らす地域でともに生活しているネパールの人びとのことについて学びを深めることができました。
横浜YMCAではこれからも身近な地域の事柄から世界に目を向けて、「共に生きる」社会の創造に向けて取り組みを進めていきます。

(国際・地域事業)