水泳から学んだ「自ら行動しなければ前に進まない」を私は肝に銘じている。水以外に触れているものがない水中で進むにはひとかき、ひとけり、自ら手足を動かさなければならないことをたとえに、本コラムを「ひとかき」としたことは以前に紹介した。この「かき」や「けり」の蓄積によってメートルあるいは秒といった目標や成果となっていく。一つひとつの集積が成果となるものは水泳以外にもあるだろう。
10代・20代が選挙における投票率で他の世代より低いとされている。1票の積み重ねが何かの目標を達成する、自分の思いが叶うとの実感が持てないからだろうか。自らの思いを、権利を行使して託すことで社会の変化を促すことが実感できれば、投票者が増え、投票される側の意識も変わるはずだ。
災害などの復興、特に心の回復への言葉がけには、急がせず寄り添うことを意識する。「少しずつ」「ゆっくり」「一つずつ」「一歩一歩」と表現されることもある励ましは、心の痛みや、悲しみの中にある思いからの回復に力を与えてくれるのだろうか。ゴールや先が見えない中で、ひとかきや、一歩の強制が途方もない先に向かう小さなものであると思ってしまったら、次の動作につながらなくなってしまうかもしれない。寄り添い、共にいて、支える存在がいてこそ小さい一歩を積み重ねていけるのだと思う。
喜ぶ人とともに喜び、泣く人とともに泣くことを聖書は教えてくれている。多くの祈りとともに寄り添う想いが募金として寄せられている。それらの想いに感謝するとともに横浜YMCAは、避難所運営のサポートや子どもたちの心のケアのための専門職の派遣、プログラムなどを通して寄り添っていく。
(総主事 佐竹 博)