2023年9月1日金曜日

体験を平和につなぐ Vol.26

 ハルビン(哈爾濱)の地

 残留生活の中で慰められ、支えられたエピソードを母は繰り返し口にしていました。それは、敗戦の年のクリスマスの夜に、日本人が集団で生活している建物の窓辺でその地のクリスチャンたちが、わざわざクリスマス・キャロルを聞かせてくださったというのです。心慰められ、感謝に満たされたことはもちろんで、このような時に、さまざまな方から、いろいろな形で親切にしていただけたことは忘れられないようでした。

 私は、「ハルビン(哈爾濱)」の地で、一時期ソ連(当時)側の使役に従事していました。幸い身内の家庭に居候をし、一年後帰国することができました。戦後の「ハルビン(哈爾濱)」には、北満州一帯周辺各地からの避難民が終結し、寒冷地での越冬は過酷であり、多くの女性や子どもたちが犠牲になりました。今日も残留日本人孤児のことが話されますが、これらの日本人の子らを養育した中国人の善行に頭が下がります。

 当時、私は幸いにも日本に帰国することが許されました。医学の学びを続けることが可能であるならば、次の代の国を支える子どもたちへの働きに就きたいと願っていました。

(元横浜YMCA常議員・元大和YMCA運営委員長 髙橋信夫)