2023年2月1日水曜日

否定

2019年、M1グランプリの頂点に立った漫才は、平和な漫才だった。二人で一つの答えを探していくネタ、ヒントに対し「間違いない!」とその理由を説明して断定するが、答えは違う。次のヒントでも「絶対、○○」と断定して、持論を展開し笑いを誘う。

この二人、相手を否定しない。答えが違うと教えるほうも相手の間違いを聞いて、自分もそう思うけど、と相手を肯定してから、理由を説明する。聞いた方も素直に間違いを認め、その納得した理由を続ける。大声でどなり立ててはいるが、どちらも否定されずに人びとを笑いに誘う。

昨今、「傷つけないお笑い」が広まっているそうだ。「ツッコミ」と称してたたく、否定する暴言を吐く、見た目を「いじる」、これらに対する社会の目が変わってきているのではないかと感じている。

ところが、2022年の頂点に立った漫才は、徹底的にある事柄や人を否定していた。自己主張をせず、周りに合わせることを美徳とする風潮の中で、自分の考えを堂々と述べる勇気が評価されたのだろうか。それは、勝手な思い込みをいかにも正論のように仕立て、フェイクニュースがSNSで拡散するのと同じような、気味の悪さを感じた。

私たちは、他者との関わりの中で、お互いに肯定し、尊重し合い、違いを認め共に生きていかなければならない。

「人間は他人を信じないからさ。信じないから疑い、疑うから他人を悪いと思い始める。人間を間違わせるのさ。」などのせりふを生み、勧善懲悪のアニメ界に変革をもたらした『機動戦士ガンダム』に携わられた安彦良和さんが、平和を願い2月11日に行う会員大会に登壇される。ぜひご視聴、ご参加いただきたい。

 (総主事 佐竹 博)