2022年1月10日月曜日

人生にyesと言おう

強制収容所所長が気まぐれで囚人たちに歌を歌わせた。ヴィクトール・フランクルによると「朝、昼、晩と歌わなければならず/寒いなか、何時間も立たされた後で/自由な意志で好きなときに歌ったわけではなく、疲れているのに、嫌々うたわされた行進曲」だったそうだ。のちに親衛隊員の暴行で命を落としたユダヤ人によるこの曲の歌詞は「たとえどんな運命が待ちうけていようとも/私たちはそれでも人生にyesと言おう/いつかその日は来るのだから/そのとき私たちは自由を手にする」。フランクルはこの曲について「それでも、この歌は、歌詞も曲も、囚人とされた人たち自身の表現であったし、歌わされたのだとしても、そこに自分たちの意志をこめることができた」と説明している。

「親ガチャ」(※)という言葉をよく聞くようになった。明確な定義はないが「ガチャガチャ」で出てくるカプセルの中身のように、生まれた時の環境や親で自分の人生が決まっているという人生観が若者に広がっているのだという。「努力次第」「諦めなければ報われる」は若者に響かないそうだ。だれもがストレスを感じ、あきらめの中で誰かと比べている。その状況を「はずれ」「当たり」という自分の手の届かないものに転化しているらしい。

イエス・キリストはベトサダの池で、病で苦しむ人へ「よくなりたいか」と声をかけられた。その人は床を担いで歩き出す。その人によくなりたいという希望があったから願いがかなえられたのだと思う。

1年の始まり。たった1日が改まるだけのことかもしれないが、心に気持ちの切り替えは必要だ。人生に希望を持ち歩む、そのそばにYMCAは共にありたい。今年もYMCAは自ら人生を切り開こうとする人を応援していく。

(※2021年流行語大賞サイトより)

(総主事 佐竹 博)