2021年6月10日木曜日

マジックワード

「望ましい行動をとれるよう人を後押しするアプローチ」=ナッジ(nudge)を、最近よく見聞きするようになった。レジ前に並んでいる足の形のマークもそのひとつらしい。富士山YMCAのトイレには10年前からあった。スリッパをそろえましょう、次の人のために並べましょうといった強制・指示でもなく、ただ床にスリッパの形をした枠線が書いてあり、おおむねその通りに揃っている。

直接言葉として働きかけるものに「マジックワード」がある。子どもたちの「できた!」「すごい!」に導くリーダーたちのさりげない言葉がけや、心からの応援などの「ホワイトマジックワード」、一方、とても意味がありそうだが、よく考えると分からなくなる思考停止を招く言葉を「ブラック…」に区分するそうだ。唱えるだけで何かを「やった」という雰囲気になるが、実際はうまく問題解決できない「ブラック…」は組織や会議で気を付けなければならないとされる表現である。

YMCAのキャンプでは、リーダーたちのトレーニングで得た知識や培った経験による思いの詰まった、それでいてさりげない言葉がけや行動によって、気づきや意思決定のきっかけになることがある。子どもたちがグループで自分たちなりの答えにたどり着くことを優先し、そしてその決定を全力で支援する。「ナッジ」と「ホワイト…」が詰まったキャンプでは、お互いに影響し合い、成長する密度の濃い時間を過ごす魅力がある。今夏もあらゆる対策を講じキャンプの準備を始めている。子どもたちが外に出て、仲間とともに成長するキャンプが待ち遠しい。

〔参考〕『その言葉だと何も言っていないのと同じです!』吉岡友治(日本実業出版社)

(横浜YMCA総主事 佐竹博)