2020年1月21日火曜日

一隅を照らす


自然相手は ただ根気
何があっても ただ水やり
褒められても くさされても ただ水やり
誰が去っても倒れても
ただ水やり
嬉しくても 疲れていても ただ水やり
風が吹いても 日照りでも ただ水やり
邪魔されても 協力されても ただ水やり
誰が何と言おうとただ水やり
魔法の薬はありません
(詩 故中村 哲医師)

アフガニスタンで、困難にある人びとに、隣人として寄り添う医療活動やかんがい用水計画で多くの命を救うなど平和の礎をつくってきた中村哲医師が12月4日凶弾に倒れ天に召された。中村医師と亡くなった現地スタッフの家族、関係者の上に、神様の癒しと恵が注がれるよう祈りたい。

中村医師は、中学をミッションスクールで過ごし、キリスト教と出会い受洗され、九州大学YMCAで聖書を学び、卒業後、YMCAが源流のJOCS(キリスト教海外医療協力会)の要請でペシャワールに派遣され、医療過疎の山村の診療所やハンセン病患者のために尽力した。その後、アフガン二スタンで診療する中で、干ばつで亡くなる子どもたちを見た。きれいな水がなければ、薬があってもどうにもならないと砂漠化した土地を農地にしようと「緑の大地計画」を始めた。壮大なかんがい用水路計画に希望を託し現地農民も参加した。

7年後の完成時は、1.5万ヘクタール(東京ドーム3千5百個分)の土地を潤し、60万人の生活が豊かに戻った。現地の青年を専門家に育成し、全土にこの活動を広げる道半ばに命を落とした。隣人に寄り添い一隅を照らしたこの活動が根付くよう水やりを続けてほしいと願う。


(横浜YMCA総主事 田口 努)