2015年10月10日土曜日

総主事コラム ブログ 2015年10月

「砂場の知恵」

何でもみんなで分け合うこと
ずるをしないこと
人をぶたないこと
使ったものはかならずもとのところに戻すこと
ちらかしたら自分で後かたづけをすること
人のものに手をださないこと
誰かを傷つけたらごめんなさいと言うこと
(ローバト・フルガム)

 「人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ」の一節だ。先日、10年前に保育園の園長をしていた時の卒園児と保護者と再会した。その際、この詩を想い出す場面があった。久しぶりに訪れた園を親子で見学し、トイレや椅子の小ささや広いと思っていた園庭がこんなに小さかったのかと驚きの声が響いた。
 砂場を眺めながら、夢中で、砂山を作ったり、ケンカをしたり、蝉のように体を震わして泣いたり、そして仲直りしたりとこの詩のように「人生の基礎を砂場や園の生活で学んだ」と、あるお母さんから伺った。
 砂場でのケンカは、山を作る子、川を作る子、相撲をとる子がそれぞれいて、相撲でおされて川を作る子にぶつかり、よろけて山をつぶしてしまうと山の子が川の子に泣きながら殴りかかるという漫画のような連鎖反応のケンカがよくあった。ケンカが起きるとその場所から距離をおく子、好きな子に加勢する子も表れるが、そのような集団的な自衛では解決できないので、保育士が一人ひとりに向き合い、受け止め、納得できるよう根気よく関わっていたことを想い出す。まるで国同士の紛争の和解仲介者のようだった。
 大人になった私たちこそ幼い時代に学んだ分かち合い、ぶたない、自分で責任を取る、傷つけたら謝るというこの詩のような平和と和解の心を取り戻したいと思った。
(横浜YMCA総主事 田口 努)