2024年1月5日金曜日

体験を平和につなぐ Vol.30

 敵を愛する

 世界に紛争が絶えない現実があります。聖書は平和について次のように伝えています。「敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい。」(マタイによる福音書5章44節)と記されています。そして、別の箇所には「敵を愛し、あなた方を憎む者に親切にしなさい。悪口(わるくち)を言う者に祝福を祈り、あなたがたを侮辱する者のために祈りなさい。」(ルカによる福音書6章27-28節)とあります。「敵を愛すること」は、容易なことではありません。「自分を迫害する者のために祈りなさい」とありますが、何を祈れば良いのでしょうか。「祝福」を祈るようにということですが、ここに求められているような「祈り」など、「とんでもない」という思いなのではないでしょうか。

 しかし、聖書は、非常に具体的な例を、次に続けて記しています。「自分を愛してくれる人を愛したところで、あなたがたにどんな報いがあろうか。徴税人でも、同じことをしているではないか。」(マタイによる福音書5章46節)といい、「自分の兄弟にだけ挨拶したところで、どんな優れたことをしたことになろうか。異邦人でさえ、同じことをしているではないか。」(マタイによる福音書5章47節)と、類似の論理を示し、同じ共同体を超えた愛を求めているのです。そして、結びとして、「だから、あなたがたの天の父が完全であられるように、あなたがたも完全な者となりなさい。」(マタイによる福音書5章48節)とあります。私たちが、不完全であることを 神様はご承知の上で、求めておられると思うのです。

(元横浜YMCA常議員・元大和YMCA運営委員長 髙橋信夫)