「今生きている奇跡」(前略)
私は今も、生まれ育った
気仙沼で生きている。
これからも、近くで、
自分の目で気仙沼がどうなっていくのかを
見届けていきたい。
それが今の私に出来ることだと思う。
私の命は、今も変わらず
音をたて、動いている。
皆さんも、自分の胸に
手を当て、感じてほしい。
「私は今、生きている」
ということを(後略)
(気仙沼市 斉藤日向子)
東日本大震災から6年目を迎える。2011年8月『文藝春秋』臨時増刊号『つなみ被災地の子ども80人の作文集』が発刊された。震災から1、2カ月後の子どもたちの生々しい震災の記憶がつづられた作文集は、多くの反響があり、各地で朗読会が開かれ、小・中学校の教科書にも掲載された。被災経験のある神戸 や新潟、外国ともつながり10カ国を超える国で翻訳された。
作文は、地震と津波から生死を分ける避難の体験、家や思い出の物や人、街ま で一切を失い、身近な家族や友人の命を一瞬で失う中で希望を生み出そうとする体験を刻んだ「言葉」に力があったと編集者は述べている。
2016年に『つなみ5年後の子どもたちの作文集』が発刊された。二つの文集を読み返し「怒涛の5年」「生死がかかったあの日から5年」とそれぞれの5年の重みを感じて涙した。家族と友人がいて、暖かい食事と安心して眠れる場があるという当たり前の日常への感謝と失った人びとの「命」の分も大切に生きようとする葛藤の5年の日々がつづられている。唯一、5年前と同じ言葉で結んでいるのがこの作文だ。震災をわすれずにつながっていこう。「今生きている奇跡」を大切に生きようとのメッセージに応えたい。
(横浜YMCA総主事 田口 努)