横浜YMCAでは、独立行政法人 国際協力機構 横浜国際センター(JICA横浜)の海外研修員の地域交流事業を受託し行っています。研修員の方々には日本への親しみと、多くの地域の方々には国際協力や海外への関心を深めて頂くなど、相互交流の機会を設けています。
9月25日(日)にインドネシア1(機械・製造工学 博士2)、インド1(FRIENDSHIP慶応2016博士課程)、アフガニスタン2(2016・農・横浜市立大学生命ナノシステム科学研究)、ブラジル2(医用材料と再生医療、家畜感染症及び人獣共通感染症の診断予防技術)の6名で三渓園と横浜シンボルタワーをめぐるツアーを実施しました。
参加した研修員の中には来日してまだ1週間足らずの人達もいましたので三渓園までのバスの車内では横浜とみなとみらいの歴史や横浜駅周辺の電気店やラーメン店の情報など、横浜に関する様々なテーマが話題になりました。
当日は久しぶりの好天に恵まれ、三渓園も朝から多くの観光客で賑わっていました。研修員たちにとっては初めての日本庭園で、入場門を抜けるとすぐ目の前に広がる大きな池と遠くに見える三重塔、開放的な空間に驚きの声があがりました。先ほどまでの都会の街並みとはまるで別世界の緑豊かな園内の景色にすっかり心を奪われた様子で、研修員たちはみな思い思いの構図で熱心に写真を撮っていました。ところが、しばらくすると写真を撮るのをやめ、腰をかがめて池の淵を覗き込み始めました。そこには久しぶりの晴れ間に池から出てきて甲羅干しをする亀と人影に集まってきた鯉の姿が。日本の池ではよく見られる光景も研修員たちにとっては新鮮だったようで、大きな日本庭園をまるで自分たちの庭のようにのんびりと過ごす小さな生き物たちに興味津々でした。
研修員たちのリクエストで内苑と呼ばれる臨春閣周辺と、三重塔を見学することになりました。内苑は開放的な大池とは異なり、緑の木々に囲まれた小さな池とひっそりとたたずむ伝統的な日本家屋とが絶妙なバランスで配置されていて、その美しさに研修員達が思わず息をのむ様子が見られました。池の周囲の小道を歩きながら、見る角度によって表情が変わる庭の景色に感動し、日本庭園の奥深さに驚いていました。もう少し経つともみじが色付き、池の周囲が赤や黄色で彩られると聞いた研修員は是非、違う季節にも訪れて見てみたいと話していました。
内苑を散策した後は皆が気になっていた三重塔を目指しました。小高い丘に建つ塔までは少し急な斜面が続き、だんだんと口数も少なくなっていきました。ようやく三重塔に到着すると、遠くから眺めていた時にはわからなかった重厚で、繊細な塔の作りに目をみはっていました。600年近く前に建てられた建物をバラバラに解体して運び、再び建て直したものであると聞くと驚いた表情で塔の下に近寄り、小さなパーツが複雑に組まれた軒下を熱心に眺めていました。日本に地震が多いことを知っている研修員は、はるか昔から地震に強い建築技術が発達していたこと、その匠の技術が現代も大切に受け継がれていることに深く感動していました。
その後、大池の周辺を散策していると和装の婚礼衣装で写真撮影をしている人たちに出会いました。赤い打掛が庭園の緑に映えて美しく、研修員たちもしばし足をとめて眺めていました。短い滞在時間ではありましたが、都会の喧騒から離れ、心が洗われるようなひと時が過ごせました。
三渓園の次は本牧港に建つ横浜シンボルタワーへ向かいました。先ほどまでの景色とは対照的に広い海を背にそびえたつ近代的なデザインのタワーを見上げながら吹き抜ける心地よい海風に、研修員たちはリラックスした様子でした。展望ラウンジに上がると横浜港に入出港する様々な形の船を見ることができ、横浜港が現在も活躍する国際港であることを認識できました。
せっかくなので展望ラウンジのさらに上にある展望室も見学しよう!と、塔の中を階段で登っていきました。想像以上の階段の数に研修員たちからは「今日は朝からいっぱい歩いているから、良いエクササイズになっているよね」と笑いが起こりました。階段を登り切った先には360度横浜港を見渡せる美しい景色が広がっていました。研修員たちは、ランドマークタワーや羽田空港を離発着する飛行機を見つけ、苦労して登って来たからこそ見られた景色を喜んでいました。東京や千葉まで見たいと備え付けの双眼鏡にお金を入れて探す研修員もいました。あいにくの靄で視界が悪く、千葉までは見えませんでしたが、ベイブリッジの先に広がる景色を見つめながら、今度は自分で東京や千葉まで行ってみようと話していました。
久しぶりの秋の晴れ間に、伝統的な日本庭園と現在の横浜港、異なる二つの美しい景色を楽しむことのできたツアーとなりました。
YMCAデスクでは今後も様々な体験を通して日本の自然や文化を学ぶ機会を作っていきたいと思います。
(JICA-YMCAデスク 野田真由美、石川義彦)