2023年12月1日金曜日

体験を平和につなぐ Vol.29

 剣を鋤に 槍を鎌に

前号で紹介した書籍「戦争と罪責」に登場する小川武満牧師は、中国北京の中国人教会での平和のための日中合同礼拝において「戦争の罪責を最も負っているのは私自身である。私はそのことを告白せずに聖書の言葉を語れない」と述べたといわれます。これを野田氏は「これは、死ぬための戦争を生き延びた人の証言である」と評しています。小川牧師は、2003年12月14日、90歳で亡くなられましたが、私たちは、その志を語り続けなければならないと強く思わされます。

このようなことを思い巡らすと、「人は自分のした罪の責任を認めがたい性(さが)を持っている」ということを自覚することにより初めて「和解」をすることが可能となるのではないでしょうか。そして、この「和解」の出来る関係が築かれることで「平和」の具現化につながっていくと思います。

 この「平和」な社会の姿こそ、聖書イザヤ書2章4節に記されている「彼らは剣を打ち直して鋤とし 槍を打ち直して鎌とする。国は国に向かって剣を上げず もはや戦うことを学ばない。」という社会だと思うのです。この聖書の言葉は、国際連合ビルの前の広場にある碑に刻まれているといいます。国際連合の願っている世界こそ、この聖書の言葉の示す姿なのです。しかし、残念ながら、国際連合の願いをよそに、世界に紛争が絶えない悲しい現実があります。平和を願う思いが、この現実の中に埋もれてしまいそうに思われます。何とか、道はないものかと思う日々です。

(元横浜YMCA常議員・元大和YMCA運営委員長 髙橋信夫)