今年も富士山YMCAは、テント泊キャンパーでにぎわっている。2015年に漫画の連載として登場し、その描写のリアルさに驚いた。その後アニメ化、実写ドラマ化を経て知名度が上がった。利用するキャンパーには「ソロ」「ファミリー」「キャンプオフ」というものまである。物語の舞台を訪れ、登場人物と同じ場所に立ち、時を過ごし物語の世界観に浸る、ファンはそういう場所を「聖地」と呼ぶらしい。
鎌倉市の江ノ電鎌倉高校前駅の踏切も同様で「スラムダンク」の有名なシーンの舞台とあって、海外を含め訪問者が後を絶たない。住民の生活に影響が出るなど社会問題化している「聖地」でもある。
私はいつか、聖地旅行をしたいと思っている。イエス・キリストが歩まれた跡をたどりたい。エルサレム、ガリラヤ湖、ベツレヘムなどその場所に行き、空気を吸い、聖書に書かれている世界観を、その上に立って感じてみたいと思い、聖書巻末の地図を眺めている。この聖地訪問へのあこがれは、信仰に基づくものも、富士山YMCAも、鎌倉高校前も、自らがその世界観に浸りたい熱い思いは共通なのだろう。
現代、私のあこがれる聖地では自由に移動ができない。隣町のベツレヘムへ移動するのにイスラエルからパレスチナ自治区への検問所があるそうだ。そして今、聖書に登場する地域で争いが起き、多くの犠牲者がいる。命を犠牲にしてまで戦いを継続する大義があるのだろうか。
聖書には過ちに気付き、告白し、許され、生まれ変わるなど平和なシーンがいくつもある。キャンプやバスケと同様に、聖地では平和な世界観に自分を映しこんで浸りたい。その現場は戦場ではない。
平和が一日も早く訪れますように。
(総主事 佐竹 博)