2021年11月4日木曜日

体験を平和につなぐ vol.4

 歴史の授業

「紀元弐千六百年」が盛大に祝われたのは1940年(昭和15年)、筆者が幼稚園の年だった。路面電車が装飾をつけてはしる花電車を皆で見物した。旗行列にも参加した。「紀元は弐千六百年」の歌は今でも歌える。この紀元とは初代の天皇とされる神武天皇が即位した年を紀元元年とした紀年法で、もちろん歴史的根拠はない。

しかし終戦まで歴史の授業はこの紀年法によっていた。戦時中を舞台にしたテレビドラマで当時の女学生が「イイクニツクロウ鎌倉幕府(西暦1192年)」と勉強していた。これはまったくのうそで、当時の歴史授業はすべて神武紀元でなされていた。「イチニイチニと百済から」とは仏教伝来が神武紀元1212年と記憶する法である。

戦後歴史教育に西暦が導入され、国外の歴史との比較が容易になった。戦時中は国民学校の先生が「西洋人など威張っていても、西洋より日本の方が歴史が古い」と言ったが、こんな言葉のごまかしは子どもでも見やぶれた。

今年、中華民国歴は110年、日本紀元は皇紀とも言い2681年、大韓民国は檀紀4354年、ユダヤ歴は5782年、古きをもって尊しとはしない。西暦はキリスト紀元と言われるが、イエスの誕生は紀元前4年が現代の歴史研究の教えるところである。

(横浜YMCA元常議員 松島美一)