2021年11月10日水曜日

会報第一号

11月は横浜基督教青年会会報第一号発刊の記念月である。横浜YMCA創立から20年、1904年(明治37年)11月5日に発行された。多くの史料は震災や戦災により失われたが、会報は現存している。

第一号には、「軍隊慰労事業」の報告があり、『横浜YMCA百年史』によると、この「事業」は、東京YMCAと前年に(1903年)に発足した日本YMCA同盟によるもので、日露戦争における「韓国及び満州の十一ケ所で出征兵士のための戦地における生活の身辺の便宜またキリスト教の講和などによる兵士への心の慰めと伝道」であったという。

横浜YMCAは直接的には参画せず募金で協力したようだ。続く会報第三号1905年2月)には、20歳の若き横浜YMCA会員が入営し、第九号(11月)で奉天にて戦死したことが会員消息として報告されている。

『横浜YMCA百年史』では、「平和を願いつつも国家によって戦いの中に組み込まれた多くの若者たち」の一人であり若くして天に召された横浜YMCA会員の活動記録、友人への書簡などにより個人像が掘り下げられている。青年会員戦死の報から40年先まで日本は戦争を続け、特に北東アジアの人びとに今に至る深い痛みを与えた。

日本YMCA基本原則は、私たちはアジア・太平洋地域の人びとへの歴史的責任を認識して平和の実現に努めることを宣言している。私は戦争を体験していない、しかし137年の歴史の中でYMCAが経験したことをたくさんの記録から知ることが出来る。未来を担う子どもたちのために、争いを力で解決すること以外の手段を示し、伝えていくことが私たちの責任であると強く感じる。

(横浜YMCA総主事 佐竹博)