靴や服を着けたままで落水した場合、衣類が水分を吸収して重く、動きにくくなり泳ぎが得意な人でもうまく泳げず、無駄に体力を消耗することにもなりかねない。身を守り救助を待つことを伝えるフレーズに「ういてまて」がある。文字通り「浮いて待て」という意味で、①慌てずに大きく息を吸って、水面に仰向けになる。②手足は大きく大の字に広げて、水面に浮く。③無理に服や靴を脱がない。これらの方法を水害や水の事故が多いアジア諸国に紹介したところ注目を集め、「UITEMATE」という日本語のまま、広まっているという。
YMCAは水の事故を防ぐことを広く社会に啓発する「ウォーターセーフティーキャンペーン」を30年以上取り組んできた。また、YMCAの水泳教室は水の事故を防ぐための教育を行い、泳げることで生命を守る方法を習得することを目指している。4泳法の取得は自由に自分の体を水中で動かせるようになることの目安だ。万が一の際に泳げることで救える命があり、水泳は健康によく生涯スポーツともなる。併せて、水の事故に遭遇した場合に自分の命を守りながら、他者のためにできる行動などを水泳教室以外の参加者にも、近隣の小学校等へも伝えている。しかし、災害による水の事故や、慢心過信による事故は起きている。また、すべきことをしなかった、すべきでないことをしたなどという人間の行為に起因する重大な事故も起きたばかりである。事故事件の報道に接するたびに、どんなに個人が備えていても防げないことがある無力感が心を支配しようとする。しかし大切な命を守るすべを伝えない理由にはならない、今年も心を奮い立たせてYMCAスタッフは命の大切さを伝えていく。
(総主事 佐竹 博)