2022年5月10日火曜日

同じものに、違うものに

三浦知良さんは、「いい選手は条件に左右されない」と評した。観客数やピッチといった環境の違い、バス移動や雑魚寝などといった待遇の違などたいていのことは苦にならず楽しめる、そして、サッカーへの姿勢や情熱はどこでも変わらない、と。とかく「違い」に目が向きがちだが、「違わない」ことも同じくらいあり、今まで以上に1日の練習を大切にして学んでいくのだという。(日本経済新聞コラム2022年2月11日)

岡潔さんが小林秀雄さんとの対談において「数学も千篇一律になって個性を失う」と題して、(人の)個性はみな違っているが、それでいて、いいもの(他の個性)には共感するという普遍的なところがあると言っている。「違い」が個性的なものであればあるほど共感しやすいのだそうだ。(人間の建設 新潮文庫)

人は違いを探すよりも、同じものを持っているところに目を向け共感する。人は自分とは違うものに目を向けて共感する。「共感」というキーワードにおいて対照的なアプローチだ。

私たちは今、戦禍に苦しむ人びとの映像を見続けながら、思いを馳せ、自分事のように考えようと努めている。同時に、いつのまにか「ひどい」と「かわいそう」のような対立軸に刷り込まれつつある。しかし、戦場でも、避難先でも誰もが同じ人である。だからこそ立場は違っても、大切な人を想う気持ちは共通であり、共感できると信じたい。そして誰もが個性的で大切な存在だからこそ、相手の主張に興味を持ち自分にないものに共感することができると信じたい。違いを認め共に生きることが今こそ大切であり、そのために世界のYMCAは連帯する。関わる一人ひとりの祈りによって支えられて。

(総主事 佐竹 博)