最も個人的な思い出の
中にこそ、最も普遍的な
真理が隠れていると
聞いたことがある。
最初のチャリティーの
思い出は、わたしの中で、
祖母のぬくもりと
固く結びついている。
(「ぬくもりの記憶」抜粋 片柳弘史)
片柳神父の著書の一節である。幼い時、自分の一年間の募金をその窓口に届ける時、すがすがしい気持ちといつも祖母と手をつなぎ出かけ、そのご褒美にランチを共にしたぬくもりの記憶がこころに刻まれているという。
私の最初のボランティアの思い出は、小学生の時に土砂崩れで私の住む集落が孤立したので、土砂をよけ、道路が開通した瞬間、皆で喜び合った記憶かもしれない。YMCAの災害ボランティア活動は、甚大な被害に立ちすくむ人びとと出会うことがある。皆に支えられ、力を借りないと復興できないことを体感した人たちは、一人暮らしや高齢者の家などの支援に回るが、普段からつながりがないと手伝うことも、手伝いをしてもらうことも、なかなかできない。
災害ボランティアセンターが立ち上がり、コーディネートすると、見知らぬボランティアが、見知らぬ被災者を支え、新しいつながりができる。見知らぬ人同士が支え合う関係を創る。これこそが自立した市民による、共に支え合うぬくもりの記憶となる。支えられ、支える喜びなどのぬくもりの記憶を持つ人びとが、ボランティアとして活躍する。
被災して困難の中にあっても新たなつながりやきずなとなるぬくもりの記憶が生まれ、支え合う市民社会の創造につながればと思う。
(横浜YMCA総主事 田口 努)