2018年4月10日火曜日

感性を育む

隣人を自分のように愛しなさい
(マタイによる福音書22章39節)


YMCAをはじめキリスト教主義の学校や団体の根底には「隣人愛」がある。隣人とは物理的な距離の隣の人ではない。苦しみや困難の中にある人に寄り添い、自分や自分の家族のように心を通わせることができる人を隣人という。身近な人から、まだ見知らぬ遠い世界の人に向けても、そして自分に攻撃する人や憎みを持つ人にも、自分のように愛しなさいという意味を聖書全体で語っている。

隣人愛を一言で語ることは難しいが、YMCAでは他人事を自分事に変える力とも言っている。最初は、水泳や体操、英語などを自分のための学びとしてYMCAにやってくる。どのプログラムにも学ぶ仲間がいるが、例えば水泳で25メートルを初めて泳げて「やった」という自分の喜びの場面で、リーダーや仲間が一緒になって喜んでくれると、喜びが倍増する。喜んでくれる仲間と過ごす中で、いつの間にか、仲間が何かできた時の喜びを一緒に喜べるようになってくる。まるで自分のことのように人の喜びが自分の喜びになってくる。

このような喜びの分かち合いの時を積み重ねていくと、その仲間が苦しみの中にある時に自分のことのように悲しみ、祈ったりするようになる。保護者や仲間と喜びを共有し、互いに互いを認め合う自己肯定感を豊かに育み合う関係を多く積み上げている子は、人への思いの感性が豊かになっていく。YMCAで国際協力や災害支援などの活動を聞き、学ぶ機会の中で、まだ見ぬ遠い世界の人の笑顔が脅かされていることに心を痛める人になっていく。YMCAの全ての活動でこんな感性が豊かに育つことを目指している。

(横浜YMCA総主事 田口 努)