日本大通りの秋、私が横浜の人びとの寛容さを感じるときの一つです。通りはイチョウ並木、道の両脇に歴史的建造物、通りの先は海、秋には鮮やかな黄色が映えるフォトスポットとして有名です。しかしその足元には落果したたくさんの実、道行く人に踏まれてつぶれ、あの独特のにおいが放たれます。1か月ほどもない期間と思いますが、街で働く人びとも、住む人びとも季節の風物詩として受け入れているようです。他地域では、駐車場に落ち葉がたまるから、日照がさえぎられるからといった住民からの要請で、公園などの樹木が伐採されるとも聞きます。日本大通りのイチョウ並木には、臭い、汚い、滑る、と思っている人はある程度いるでしょうが、だからと言って極端な行動にはなりません。横浜の人びとは自然に対して寛容で、ちょっと気に入らないことはあるとしても、秋のわずかな期間にきれいな景色のプレゼントをくれることを受け入れ、それを目当てに訪れる観光客に対して誇らしい気持ちなのではないでしょうか。
参院選挙あたりから、排他的な、差別的な、言説が目立つようになりました。極端で一部の過激な人たちの考えにとどまらないほど、一定数の人びとに支持を受けてしまいました。そんなに誰かと区別しなければならないのか、と心配になります。いろいろな人がいる社会だからこそ、お互いに配慮し合い共生することを目指し、「違いを認め共に生きる」という心を持ちましょう。
今、びっしりとついたイチョウの実は、その重さで枝をしならせ、私の顔の高さで緑色の実に触れることができます。実はまだ固くにおいはしません。イチョウは秋に向けちゃんと準備をしています。
私たちは社会での選択を、イチョウに問われているようです。
(総主事:佐竹博)