「神様がたった一度だけ この腕を動かしてくださるとしたら 母の肩を たたかせてもらおう」この詩画を描いた星野富弘さんが4月に神様のもとへ帰られた。体育教師としてクラブ活動中、落下により頸椎を損傷し手足が不自由となり、以降、筆を口でくわえ、詩画を描き始められた。けがの後に受洗した星野さんは、積極的に制作活動をされ、各所で展覧会なども開催された。横浜YMCAも周100周年記念事業の一環で40年前、1984年2月に横浜高島屋で星野富弘詩画展を開催している。
私はYMCA健康教育事業に従事していた約30年前に、研修で星野さんのことを知った。事故防止、そのための取り組み、事故を起こすことはどれだけ重大なことか、そのような点が強く印象に残り、「星野さんといえば『安全』のこと」だった。
星野さんにとっての願いは、不自由な生活の中でたくさんあっただろうが、それらの中から祈り求めて一つ選んだものが「ぺんぺん草」に表現された、お母様の肩をたたきたいという願いだったのだろう。「愛」の深さを感じる。
20年ほど前に、たまたま横浜キリスト教書店で「ぺんぺん草」と題のついたこの絵はがきを見つけた。それをきっかけに、星野さんの数々の詩画から多くを学んできた。この詩の後半は「風に揺れるぺんぺん草の実を見ていたらそんな日が本当に来るような気がした」と続く。
身近なことに着想を得て伝える感謝、他者への想いに学ぶこと、大きな願いを神様にゆだね、その希望を自然の小さな営みに見出すこと。美しい詩画から、物事の捉え方、考え方、生き方をこれからも見倣っていきたい。
(総主事 佐竹博)