2022年3月10日木曜日

数値と心

1月14日1115人(以降2月4日まで1週間ごと)3409人、6468人、9002人は、神奈川県発表の新型コロナウイルス陽性患者数の推移である。この紙面を皆様が読まれる時には「ピークアウト」していることを願う。私たちは目に見えないウイルスの脅威を数値で感じるようになった。増えれば恐れ、減れば気持ちが和らぎ、数値の上下に心が支配されている。

有機農産物の生産販売34年のベテラン農家が毎週発行し続けた通信があった。本当に無農薬であること、個人差がある味覚でも「特別においしい」ことを説明するには「自分という人間を信じてもらうしかない」と、毎週農産物と一緒に通信を欠かさず届けた。農薬の害などの情報伝達から、社会の出来事、家族のことなどについても、その時々のことを正直に書きつづけたそうだ。残念ながら最終号となる1383号の1カ月前、2011年6月23日号は「数値と心」との題。大半の行を割いて生産している野菜と家の中外17カ所についての数値が並ぶ。単位はベクレル。文章は『こうして数値を羅列して低いことをことさら強調しても、わかることは、もう私たちは自分の農産物に自信を添えて提供できなくなったという事実。0.1とか、0.01とか、0.001とか、数値によって切り刻まれる心。(中略)くやしいです。』と続く。

今年も3・11を迎える。あれから11年。日数という数値の経過だけでなく思いを寄せ、迎えたい。また、すべての活動において一人ひとりに寄り添い共にあろうとする中で、数字の示す意味を冷静に捉え、どのように行動するかを考え、数字に支配されない心を大切にして生きていきたい。

(総主事 佐竹 博)