2018年7月10日火曜日

共生の願い

お母さんは、家族を
あまり頼りにしないで
なんでも一人でやってしまう
でもね
お母さん、ぼくがいるよ
ぼくはお母さんが思っている
よりもずっとしっかりしている
だから、
ぼくにもっと頼ってもいいよ
ぼくがいるよ
いつかお母さんの病気が
治ることを願いながら
心の中でそう繰り返した
(千葉県 4年 森田悠生)

 
第5回日本語大賞で文部科学大臣賞受賞作品『ぼくがいるよ』の最後の文章だ。入院していた母親が退院して、大好きな料理を作ってくれた喜びの中で母親の味が変と言ってしまい、お母さんを傷つけてしまった。母親が病気をしてから味と匂いが全くないことを知る。そこから「ぼく」は提案を思いついた。料理は母親が作り、母親の味を覚えている「ぼく」が味付けをするという共同作業だった。母親は案に驚きながらも賛成し、家族の大好きなぶりの照り焼きに挑戦する。母親がぶりを焼き「ぼく」がタレを煮詰めて味を確かめる。『いつもの味だ』と声が出たら『お母さんに久しぶりに笑顔が戻った』。その日から共同作業が始まり、朝は一時間早起きして食事を作っているという。「ぼくがいるよ」ぼくを頼ってという言葉が心を打つ。

自立とは、依存できるということ、人に委ねられる先を増やすことであると聞いたことがある。子どもたちは、親や地域の方に依存でき、頼ることができる関係を作ると人からの依存を受け入れることができるのだろうか。この母親も「ぼく」に委ねることが出来て病気からの自立の一歩を踏み出した。

大人も子どもにありがとうと依存してみることも大切なのかもしれない。

(横浜YMCA総主事 田口 努)