2016年12月10日土曜日

総主事コラム ブログ 2016年12月

悲しみの意味

冬があり夏があり
昼と夜があり
晴れた日と
雨の日があって
ひとつの花が
咲くように
悲しみも
苦しみもあって
私が私になってゆく
(詩 星野 富弘)

 戦後間もない60年前、平和な世界が訪れ、青年たちによるスポーツや文化、芸術、音楽活動が盛んになり、横浜YMCAにさまざまなクラブが誕生した。その一つである横浜YMCA混声合唱団は、今も活動を続け、今年創立60周年を迎え、10月に55回目の定期演奏会が横浜みなとみらいで開催された。すばらしい歌唱力とハーモニーで、満員の聴衆から拍手が鳴り響いた。
 星野富弘さんの詩に曲をつけた合唱組曲「明日へ続く道」と、第4部の作詞、作曲高橋晴美さんの「愛と希望の世界」は、メッセージ性が高く、思いを込めて歌う姿と歌声が心に響いた。二つの組曲は、東日本大震災などで多くの別れと悲しみにある人びとへの慈しみや祈りにあふれた詩だ。
星野さんは、東日本大震災以降、しばらく作詩ができなくなったが、被災地の瓦礫の中で、美しい花を咲かせた桜の生命力を感じる映像を見て再び作詩ができるようになったと聞いたことがある。その詩もこの組曲にあった。一つの花が咲くには、夏も冬も、昼も夜も、晴れも雨も、みんな必要なのだ。誰でも苦しみや困難を避けたいが、それも含めて私が私になっていくために必要なことなのだと感じた。
 クリスマスに、私が私になっていくような神様から一人ひとりにいただいた恵と賜物に気付き、喜びにあふれた時であるよう祈りたい。
(横浜YMCA総主事 田口 努)