2016年4月10日日曜日

総主事コラム ブログ 2016年4月

咲き誇る花畑
名もない草も
実をつける
いのちいっぱいに
自分の花を
咲かせて
(「自分の花」 相田みつを)

 誰も植えることも水を撒くこともないのに、春になると毎年、咲き誇る野の花の自然に生きるたくましさを感じる。
 先日、私の好きな花は「いろんな花が咲く花畑」というベトナム難民のチャンさんの話を聞いた。35年前のベトナム戦争終結後、敗戦した側の政府軍関係者やその家族は、差別され、身の危険が迫り逃亡生活に追われ、将来に夢や希望のない日々が続いた。子どもたちが、安心して眠れ、自分らしく自由に表現でき、友だちと遊び、学校に行ける。家族で安心して暮らせる。そんな本当の平和が欲しいと船で、命がけで逃げた。ボートピープルと言われ外洋を漂い救助を待つが、その間にも船が沈み命を落とす場面を11歳のチャンさんは目の当たりにした。シリア難民のゴムボートで逃げ遭難し、幼い命が奪われる映像と重なる。
 ボートピープルの難民の子どもたちが親となり、その子どもたちが通う多文化共生の保育を目指すYMCAいずみ保育園の通訳としてチャンさんは、子どもたちと家族をサポートしている。今では、保育士にもベトナムやペルーにつながるスタッフがおり、数か国の子どもたちが通い、その国の踊りや食事を食べ、幼い時から多様な文化を受け止める力を育んでいる。10周年記念講演では、チャンさんが一人ひとりの多様な花が咲き誇る花畑のような保育園をさらに目指し、地域社会に広げようと語った。
 野にある自然の花畑のように、新学期、子どもも大人も、いのちいっぱいに自分の花を咲かせたい。
(横浜YMCA総主事 田口 努)