2015年11月10日火曜日

総主事コラム ブログ 2015年11月

「遠い呼び声でも」

赤ちゃんの泣く声に
かけて行く若いママ
ママの呼ぶ声で
かけて行くパパ
ママの耳は赤ちゃんの側
パパの耳はママの側
どんな遠い呼び声でも
愛の耳は聞き分ける
神さまを愛していると
神さまの声が聞こえ
かけていけるでしょう
パパとママとあかちゃん
(山内修一作詞・作曲)

 水害の被害にあった常総市へボランティアに行き、水に浸かった老夫婦のご自宅に伺った。「泥だらけのものでも大切な思い出が詰まった宝物。被災者に寄り添い丁寧に」という指示に従い、言葉少ないご夫婦の声を聞き分け、時間をかけて荷物整理を行った。
 お子さんの幼稚園時代の記念品が出てきた。「あの時の歌が素敵だったの」と思い出した詩のワンフレーズを語られた。周りにいた保育士や私も思い出し歌ったのがこの詩だ。腰の曲がっていたおばぁちゃんが、微笑み背筋をまっすぐにして一緒に歌いだしたのには驚きと感動を覚えた。歌ってからせきを切ったように笑顔で語りはじめ、多くの重荷の一つを下ろしたようだった。 
 11月は児童虐待防止推進月間だ。この歌は幼稚園の集会の微笑ましい様子を見て作られた。歌のようにパパとママがそろっていない、孤立しやすい一人親家族も多い時代だ。つながりをつくり、遠い呼び声を愛の耳で聞き分けるような子育て支援がより一層求められている。一緒に遊び歌うことで重荷が軽くなる。何よりも、この詩のような情景を見守る人々の存在が大きい。地域社会で子育て中の親子に笑顔で声をかけ、手を差し伸べる小さな働きかけが親子の笑顔を取り戻すきっかけとなる。「一人じゃないよ」と伝えることが大切なのだ。
(横浜YMCA総主事 田口 努)