2020年9月11日金曜日

初心を忘れずに

「第17条 その他()プールのコンディションは、(中略)次の条件を満たしていなければならない。①(中略)競技中は静水であること。」(日本水泳連盟の競泳競技規則)


競泳は、自らの力で進むスピードを競う競技である。体を動かさなければ止まった水の中では進まない。浮力と推進力を効率よく最大限に発揮するように体を動かして進む。両者を生み出すと同時に発生する重力と水の抵抗という相反するものとも折り合いをつけなければならない。自分の体の動かし方ひとつで楽に泳げたり、タイムが上がることが、水泳の楽しさでもあり、難しさでもある。自ら体を動かさなければ静水の中では進まない。進んだ距離は、自ら体を動かした成果である。

YMCAの水泳プログラムは、子どもたちに達成感を感じてもらうために、評価をゴールに対する到達距離などで刻んでいる。自ら体を動かして移動した距離の最初の評価は、バタ足4m(幼児は2m)である。勇気をもって顔をつけてスタート。この距離を超えたらYMCA到達度テストのクラゲ(黄色)合格。クラゲスイマーの4mもトップスイマーのタイムも同じく自分の体を動かして進んだ能動的な努力の成果である。

ひとかき、ひとけり、その初心を忘れず、自ら行動しなければ前に進まない、ということを肝に銘じ日々、行動し続けるために、本コラムのタイトルを「ひとかき」とした。

水泳も人生も「ひとかき」を大切にして進みたい。

この夏に、YMCAプールを体験した多くスイマーがこれをきっかけに水泳という生涯スポーツに親しみ続けてほしいと願うと同時に、あらゆる場面での「ひとかき」の積み重ねを応援したいと一人の元スイマーとして思う。

(横浜YMCA総主事 佐竹 博)