幸せなら手をたたこう
幸せなら態度でしめそうよ
ほらみんなで手をたたこう
(作詞 木村利人)
良く知られているこの歌は、62年前のYMCAフィリピンワークキャンプで誕生した。戦時中に、日本軍が多くの村民を殺害した場所で行われた復興支援キャンプに参加していた木村利人さんは、戦後初めてその場所を訪れた日本人だった。
家族が日本軍に殺された憎しみの中にある村で、最初は、あいさつもなく口も聞いてもらえなかったが、肉親を日本軍に殺された一人の青年だけは、木村さんを受け入れようと接してくれた。
戦争中の日本兵のしたことの罪深さに打ちのめされた木村さんは、その青年との出会いの中で、人としてのつながりが徐々に芽生え、笑い合えるキャンプ仲間となっていった。その姿に村人や子どもたちの交流も図られ、歌い踊る姿を見て和解と平和の思いが拡がったという。その時の村人の歌うメロディーをベースに、木村さんが作詩してこの曲が誕生した。
当時25歳で早稲田大学院生だった木村さんは。聖書の詩篇47編「すべての民よ、手を打ち鳴らせ。神に向かって喜び歌い、叫びをあげよ」の聖句を平和の思いとして歌に託したのだということを先日直接ご本人から伺った。木村さんは、その後、早稲田大学教授、恵泉女学院大学学長などを務めながら平和のための歩みを続けている。
木村さんの20年後に、私もフィリピンワークキャンプに参加し同様の体験をした。今も全国のYMCAでは、同様の国際ワークキャンプが続けられ、青年たちが社会や世界の現実を肌で感じ、共に生きる原体験を積み重ねている。
(横浜YMCA総主事 田口 努)